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2009年9月

2009年9月 3日 (木)

新型インフルエンザが流行することの、何が問題なのか?

「新型インフルエンザの予防には手洗いがいちばん大切ですから、安易に消毒薬に頼らないでくださいね」といういちのせの意見が受け入れられて、乳幼児健診などを除いてはいまだに消毒薬を設置していなかったいちのせの職場ですが。

先日の衆議院選挙あたりから、事務所に消毒薬の設置を指示しただの、投票所に消毒薬を置くように指導が出ただので、連日マスコミでは消毒薬をちょちょっと手にぬっていく姿が報道されておりました。

こうなると、たとえ必要性が薄くても、政治的にはうちも置いたことにしないと・・・という風潮が強くなります。

で、ついに対策会議からの指示ということで、出入り口に消毒剤を置くことになりました。

が、「目立たなくていいから・・・」という部長の言葉に、ああ、まだいちのせの意見はちゃんと理解していただいてるんだなと、体裁を取り繕うことにも反抗的にならずにすみます。

でも、市役所に消毒薬を置く、という事実は、確実に民間に行動を促します。

民間じゃないけれども、結局「手洗いが第一だけれど、消毒剤も置かないと市民が納得しない」という理由で、出入り口だけに置くはずだったのが、それなら公民館にも、それなら図書館にも、それなら保育所や幼稚園にも・・・と、内部ですら限りなく膨れ上がりつつあります。

*****

「新型インフルエンザが流行すると、何が問題なんでしょう?」

と問われたら、あなたはどう答えますか?

重症になって死んじゃったら大変?

冬に流行るインフルエンザでは、日本だけでも毎年1万人以上の方が亡くなってますよ。

それがニュースになってますか?

新型インフルエンザは感染力が強いから?

一人の患者さんから他の人にうつす人数は、どうやら2.5人程度らしいと推計されてます。

麻しん(はしか)なんかは10人と言われてますよ。

それが恐いと思ってる人がどれだけありますか?

もう少しすると、強毒性になって、亡くなる人が多くなるかもしれないから?

予防法も治療法も確立してる結核で、いまだに亡くなる方がありますよ。

治療薬に耐性が出来て、どんどん薬がききにくくなってるからです。

新型インフルエンザの第一報が流れた日の新聞にも、3名の方が結核で亡くなったと小さな記事が載っていました。

それすらも覚えてる人はありますか?

新型インフルエンザの何が恐いの?

新型インフルエンザの何が問題なの?

もちろん、病気にはかからずにすんだ方がいいんです。

でも、本当にマスコミが連日報道してるように、大変な事態になってるんですか?

*****

一昔前の少女小説によくあるパターンで、主人公の婚約者が「風邪をこじらせてあっけなく死んでしまった」とか、主人公のまわりにいる老婦人の昔話に、若い頃の恋人が「風邪をこじらせてあっけなく他界した」なんてのがありましたよね。

あの「風邪」って、皆さんのイメージではどんな病気なんでしょう?

高熱が出て、咳がひどくなって、倒れて寝込む・・・って感じでしょうか。

まさにインフルエンザですね。

風邪というのは、正確には病気の名前ではありません。

喉の腫れや咳、くしゃみ、鼻水、発熱、関節痛などの症状の塊のことをいうのです。

喉が腫れて咳が出るなら、「上気道炎」なんて病名になるでしょう。

その原因がインフルエンザウイルスならば、病名はインフルエンザなのです。

「風邪をこじらせてあっけなく他界した」のは感動的な物語になるけれども、「新型インフルエンザが重症化して他界した」なんて小説が今出たら、非難ごうごうでしょうねぇ。

でも、何が違うというんでしょう?

*****

別にインフルエンザを軽視しろ、と言ってるわけではありません。

インフルエンザを軽視してるからこそ、毎年1万人も亡くなってるんですから。

ただ、「新型インフルエンザ」だけを取り上げて、10人亡くなったとか、脳症を起こした人が何人いるとか、そういう報道をせっせとやることが必要ですか?

そして、それに踊らされて、マスクだ、消毒剤だとヒステリックに買いに走ることが必要ですか?

今、自分がやっておいた方がいいことは何でしょう?

今、地方自治体がやるべきことは何でしょう?

今、医療機関がやるべきことは?

今、国がやるべきことは?

そこを考えずに、個人が「ウイルスが強毒性になったらどうしよう」なんて心配しても仕方がないことです。

国は国際的な動きや研究結果などから、ウイルス監視をしたり、予防や治療のための情報や方向性をはっきりと示せばいいのです。

去年の11月に先送りしたワクチンの接種順位について、今頃とりかかってるようではダメでしょう。

世界では発生直後から論議されてたのを、国が知らないはずはありません。

医療機関は治療に専念する。

地方自治体は、住民に対して正確な情報を伝え、正しい対処の仕方を啓発する。

個人は可能な予防法と、かかったときのマナーをきちんと守って治療する。

そういうことじゃないんでしょうか。

*****

今回の新型インフルエンザは、漫然とインフルエンザ対策をしていた私達にはまさに晴天の霹靂でした。

高温多湿では弱いと思われていたインフルエンザウイルスが、夏に猛威をふるい、そういえば熱帯でもインフルエンザはあるんだよね、と単純な事実を思い出させてくれました。

流行には第1波と2波、3波がやってきて・・・と言われていたけれども、国内での感染が確認されてから、いちのせのまわりでも発熱してインフルエンザかもしれないと受診したけれど、簡易検査すらされずに「インフルエンザではありません」と、解熱剤を処方されたという話を複数聞きました。

とすると、5月から6月にかけて波が一旦おさまりかけていた・・・という見方も怪しいものではありませんか?

当時は感染者が判明すると、濃厚感染の危険ありということで、患者さんを診た医療機関が営業停止をくらっていましたから、意図的に感染の届けを出さなかった医療機関が多かったことは十分考えられます。

だから、春の発生から今日まで、実はずーっと上り坂のまんまで、まだ山のてっぺんがどこに来るかなんて、誰にもわからないことなんじゃないかと。

8週間くらいで一つの波がおさまって、なんていうシナリオは、現実にはすでに大きく軌道をはずれているような気がします。

このまま、世界中の8割の人が免疫を持つまで、山は上がりっぱなしなのかもしれない。

*****

前回、新型インフルエンザに関して書いたとき。

いちのせは予防のためのマスクの使用には否定的なことを書きました。

基本は今も同じですが、ちょっとだけ考え直したことがあります。

インフルエンザは発症する前日から感染力を持っていると考えられています。

だから、自分はかかってない、と思ってる人でももしかするとウイルスを広げているかもしれない。

くしゃみや咳で水分に混じってウイルスが飛ぶときには、マスクはそれを遮断するのにとても有効です。

そして、くしゃみや咳でウイルスが飛ぶのは2メートルくらいまで、と言われています。

ということは。

2メートル以内に人がたくさんいるところでマスクをかけることは、飛沫からの感染防止には有効だなと。

N95マスクなどは、確かにウイルスを吸い込まない予防のためのアイテムですが、きちんとフィットテストをして顔の形に合ったものを使わない限りはやはり効果はありませんし、それで普通の生活をしようとしても、呼吸困難を起こします。

マスク不足とマスクの効果は別の問題だというご意見もいただきましたが、資源が限られている以上、より有効な方法のために使用するというのは鉄則です。

マスクの場合は、人ごみの中に出るとき以外は、予防のために使うよりも、ウイルスの拡散防止のために使うことが優先されるべきだと今でも考えています。

だから、学校でも建物に入るときにマスクをつければいいのであって、一人で颯爽と自転車を走らせてる高校生がマスクをする必要はないでしょう。

反対に、いかにもつばき飛ばしてしゃべくってますってお嬢ちゃんたちは、しゃべるときに邪魔だからとマスクを取っちゃいけないんです。

なぜ、これをするのか。

ちゃんと自分の頭で考えてください。

自分で出した結論なら、多少ピントがはずれてたっていいと思います。

*****

最後にやっぱり何度でも繰り返しておきたいこと。

予防のためにいちばんたいせつなのは手洗いです。

もうひとつたいせつなのは、咳エチケットです。

この二つだけ。

このたった二つが出来てないばかりに、くだらない大騒ぎは続くのです。

*****

ちなみに「咳エチケット」とは。

1.インフルエンザを疑う症状があるときには、人に会うのを避けて養生する。

2.咳やくしゃみが出る人は必ずマスクを正しくつける。

3.マスクがないときにはティッシュペーパーなどでしぶきが飛ばないように抑える。
  使ったティッシュペーパーは人が触らないようにして捨てる。
  手をすぐに洗う。

4.ティッシュペーパーもないときには、肘の内側でしぶきを押さえる。
  手のひらで抑えると、手を洗いに行くまでにあちこちにウイルスを付着させるから。

たいていの場合、症状のある人ほどこの咳エチケットを守りません。

初期の頃みたいに感染者を停留するよりも、ちまたで咳やくしゃみをする人に強制的にマスクを配布してつけさせたらどうだろう、というようなことをブログに書いてらっしゃる方がありました。

ブックマークしてなかったので、今ではその記事をたどれませんが、すごくいい発想だと思います。

これだけで、感染拡大の速度はかなり鈍るはずなんですよ。

いくら致死率が低くても、感染者が多くなればそれだけ相対的に死亡者も重傷者も多くなる。

ワクチンで免疫を獲得する人が増えるまで、なるべく感染者は増やさないにこしたことはないんです。

さて、来年の今頃は笑ってるのか、はたまたさらに眉間にしわ寄せて立ち向かっているのか。

未来はまったく予測不能です。

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